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2014.08.14

【芝居】「カナタノヒトヘ」BoroBon企画

2014.8.9 14:00 [CoRich]

今年一月に亡くなった水下きよしのユニット名で、初盆となるこの時期に彼の出演作と、想いを馳せる物語の二本で構成。 10日まで絵空箱。休憩15分を挟み、120分。チケットにワンドリンクが含まれています。

高名な画家を祖父に持つ男。父親も画家だったが売れず妻とは別の女と心中していて、残された母は今は老人ホームで暮らしていて痴呆が出てきている。男は美大には行ったが画家にはならず、画廊を営んでいて、もう父親が死んだ歳を一回り以上超えている。
父親の亡霊がひょっこり現れる。男は当然許せない。同じ日、父の心中相手の親戚である若い女が遺品の油絵を持ち込んできて、鑑定を依頼する。祖父のと同じ「チェロを弾く女」だが、男は誰かの贋作でたいした価値はないと告げつつも預かって詳しく鑑定することになる。父の亡霊に問い詰めるがのらりくらり。同じ構図だが自分のモデルで新たに描いていたよう。父の絵だとわかった男は相場と二桁高い値段で買い取ると持ち込んだ女に提案するが、女は元の値段でいいといい、かわりに自分のことを描いて欲しいという、のはかつて父とモデルの会話そのものだったし、絵はそのモデルとも違う女をモデルに描いた父の絵だった。「星守る犬~絵空箱バージョン~」(作・演出:工藤千夏)
会社を辞め資格試験のために安アパートに引っ越してきた男は 初日そうそうに空き部屋の筈の階下から男のうめき声を聴いてしまう。大家や隣人を問いただすと、この物件には二人の幽霊が棲んでいるという。一人は隣人と一緒にルームシェアをしていて、もう一人は階下で賛美歌「荒野の果てに」を練習しているというが、まったく歌が上手くならない。というか、死んだことにすら気付いていない。隣人が働くパン屋の客で貧乏なピアノ教師をここに住まわせ、歌のレベルアップを図ろうと考える。 「クリバヤシキャロル」(作:小川未玲、構成演出:BoroBon企画) (戯曲)

なるほど、向こうへ行ってしまった「カナタノヒトヘ」という二本。

「星守る〜」は2004年に水下きよし出演で上演された物(私は未見)を改訂してリーディング上演。元々は台詞のないチェロ奏者を入れ、女三人は一人の役者という構成で演じられたもののようですが、作家自身による改訂を経て、チェロ奏者をなくし、役者三人で演じるようになっています。初演を見ていないのであくまで印象だけれど、元々はもう少しスタイリッシュな感じだったものを、もう少し泥臭くというか生々しく描いているんじゃないかと想像します。

祖父は高名な画家、父は目指したけれど母を捨てて別の女と心中した上に絵も残ってない、という男、痴呆が出ている母の心の中にはそれでも父が色濃く残っていて。絵を持ち込んだ女に心奪われる自分の姿が父親の心の動きにリンクするよう。しかもそこにあるのはじつは父の手による絵で、ということで それまでずっと拒絶し続けてきた父親を受け入れるというか、自分が重なっているのだということを認識して許す、という感じでしょうか。それを表すのがキャッチボールというのはちょっとステロタイプに過ぎる感じがしないでもありませんが、 シンプルな才能と男女の恋心の物語が二世代で重なり合い相似形をなしていて、味わいが出ているのです。

父親を演じた伊原農の軽口叩く造型が楽しい。息子を演じた瓜生和成はいい歳だけれど父を受け入れられないどこか頑なな印象に説得力。母親を演じた伴美奈子は静かに過去に生きる女純粋さ。心中相手を演じた山藤貴子は男を引き込んでしまう影をしっかりと。絵を持ち込んだ女を演じた川西佑佳は、美しく力強い「生」をえ感じさせて、男が惚れるという説得力。

「クリバヤシ〜」はコミカルさが強く出ている一本。ピアノ演奏をつけ、円形に並べた椅子をぐるぐるとローテーション、時に順番を変えながら、向かい合う対話だったり、鍋を囲む人々だったりの「会話」の場所を 作り出します。家賃4万で入った筈なのに事情を知ってる隣家は2万円とばれる下りも、歌を向上させようと呼んだピアノ教師が全く見えないとか、あるいは登場する女たちが実は誰も受験生の話を真面目に聞いてないとか小ネタで上手く引っ張って、それでもなんとなくクリスマスキャロルで感動しちゃう、みたいな魔法が楽しい。

入居してきた男を演じた瓜生和成は、真面目で他人にかき回される気弱なキャラクタが得意な役者ですが、絶品な安心感。お気楽な大家を演じるのは日替わりゲストでしたが、アタシの拝見した土曜昼は藤谷みきで、どこか調子がよくて、何事にも動じない楽しい人物造型。
男は美大には行ったが、画家にはならなかった。

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