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2013.06.16

【芝居】「劇作家女子会!」劇作家女子会×時間堂

2013.6.14 19:30 [CoRich]

時間堂との共催で女性劇作家が短編戯曲を持ち寄る「女子会」イベント。120分。16日まで王子小劇場。

美容院の客は大学を卒業したばかりの若い女で、もうすぐ結婚をするのだという。30過ぎの美容師は結婚はしていないが、年下の恋人が居る。ふとしたことで、二人の恋人が同一人物だとわかってしまう「彼女たち」(作 黒川陽子)
女と公園のベンチで待ち合わせをしている男に、街娼の女が声をかけてくる。断る男だが、女は自分が気に入ったのだから、千円で自分を買わないかというが、名前を訊ねると一万円という「Compassion」(作 オノマリコ)
夫の誕生日にケーキを作る妻。しかし夫には別の女の影が「ハッピーバースデイ」(作 モスクワカヌ)
恋が流行している小学3年生のクラス。恋が成就すると評判のメール代書のサービスをみんなが利用しているが、その文章を書いているのは、図書館に籠もり友達も少ないクラスメイトの女子だった「親指姫」(作 坂本鈴)

チラシも当日も、件の女性作家たちはパーティっぽさめいっぱいなビジュアルでやってるのに新人以上中堅未満と名乗る彼女たちが紡ぐ物語は少々ハードなものも混じって切っ先鋭く。それに戸惑いつつも。

「彼女たち」は二部構成で最初と最後に上演。第一部は、結婚が決まったという若い女と未婚の30過ぎ女の微妙な対立の中から、二人の恋人がどちらも同じ男だったという決定的な対立へ。偶然、というのが少々物語の作りとしては弱い感じがしないでもありませんが、男を包み込むように支えているのだという30女と、長くつき合ってきてしかも今日デートするのはワタシなのだという若い女との静かな戦いが面白く。30女を演じた佐々木なふみは人生経験の豊かさを感じさせる厚み、若い女を演じた長瀬みなみははちきれんばかりの若さ、というコントラスト。

第二部は二人の対立のエスカレート、男はセックス依存なのだとか、高円寺に別の女が居るとか、車を買ってあげたとか、つきあうきっかけは車にはねられたことだとか、おそらくは嘘が徐々に混じり、エスカレートし、その嘘のやりとりが二人面白くなって笑い合っちゃう、という展開。お話を作るのが劇作家の性ならば、こんな修羅場だって、ねつ造で乗り切るのだという感覚はちょっと面白い。二人が笑いあってるけれど、どちらかが別れる風でもなく、そのまま続いていくんじゃないかという不思議な感覚。相手のバッグを漁り、写真を服に隠した若い女、そのあと写真が見つからず服の中を探しまわったあげくに、スカートがばっとたくしあげて、というのはそれまでの造型とは違いすぎて、おそらくハプニングだろうと想像しますがちょっとほほえましい。

「Compassion」は、当日のトークイベント(ゲスト、高野しのぶ)によればエドワードオールビーの「動物園物語」に着想した物語。女を待っている男を誘惑する街娼、体はたった1000円なのに、名前など彼女の正体を知ろうとするとふっかけてくる、というなぞめいた造型。相手が気に入って体は安売りしても、心はそう簡単じゃない、知りたいと思う相手が居るならそれは市場原理よろしく値上がりするのだという感じがちょっと面白い。男にとってはある種の不条理な災難(いや、彼女が1000円なら毎日だって自分が通う、という声はアタシ含め多数聞こえるけれど)なのだけれど、そもそも男が待っている女とは誰なのか、そもそも本当にその相手はいるのかが怪しくなってくる感じなのもまた不条理な感じ。 女を演じた阿波屋鮎美はしなやかに色っぽく眼福だけれど「たちんぼ」というには少々上品が残っちゃうのは痛し痒し。アタシの友人は抱かれたいというイキオイだけれど、生業ではない、というのだけれど、どうなんだろ。男を演じた菅野貴夫は巻き込まれちゃう感じを好演。

「バースデイ」は、妻と浮気相手の二人の女、まったく別の空間。妻は家でケーキを焼くけれど、失敗が少ないとバターの替わりにサラダ油を使うというちょっとした引け目というか微妙な感情の持ちようとか、夫を思いくしゃくしゃになる感情で攪拌し続けるクリームが分離してしまうとかと云った具合に、ケーキを作る過程で感情を描く感じの細やかさが新鮮。もっとも、それならば最後のケーキにもうひとパンチ欲しい気がしないでもないのですが。妻を演じた直江里美はほぼ一人芝居のように静かに感情をぶつけ続ける役をしっかり。浮気相手を演じた長瀬みなみはワイシャツを羽織り素足なまさに「らしい感じ」だけれど、同じテーブルで直角に座るためにワタシの座った下手端からだと背中だけなのがちょっと惜しい。いや、背中ゆえにワイシャツに透ける下着の色っぽさったらないのだけれど。

この中では唯一コメディ仕立ての「親指姫」。恋心を代筆するというのはシラノドベルジュラックよろしく、なのだろうけれど、まるで少年ジャンプかというほどに活劇口調の語り口で、全体にどろどろな感じが先にたつ他のものとのコントラストが鮮やかで印象に残ります。 代書で手に入れた恋心、それは相手もまた代書を使っていて、自分の想いが言葉になるんじゃなくて、美しく紡がれた言葉に自分が踊らされがんじがらめになっていく、という感じは、手紙じゃなくてメールだからこそのスピード感とあいまっておもしろい感じなのです。 親指一本のケータイメールで代筆を請け負うという「親指姫」というタイトルも秀逸ながら、そのライバルの代筆屋の名前が来週同劇場で公演の劇団「こゆび侍」というのも、ちょっとニヤリとする感じで洒落ています。 地味だけどおきゃんなヒロインを演じた河南由良、ライバルを演じた木内コギトの造型はきっちりジャンプ風味。三色の女たちと独りの男を演じた時間堂の4人がまた楽しい。

ロビーではカフェ風の飲み物や缶ビール(終演後ぷしゅっとしてトークイベントを楽しめるのがいい)、おつまみ(紙コップに結構入って50円だったかは安いけれど、この季節ポテチがシナシナなのはご愛敬)を売ってたり、それぞれの作家の戯曲などを売っているのはフリマ風で楽しい。

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