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2010.10.11

速報→「気付かない奴は最強」箱庭円舞曲

2010.10.9 19:00

組織というものをきっちり濃密に、切なく描く物語を芝居を見慣れない、いわゆる「社会人」にこそ観てほしい120分。元気が出るってものではないけれど。11日まで駅前劇場。結成10周年を迎え、最後の前説と題して開場直後から劇団の10年を振り返って語るゲスト対談も楽しい。

船上パーティやボーリングなどイベントを企画して人を集める社会人サークルの事務所。ひとりひとりきちんと面接してメンバーのレベルを維持している。あるとき、マルチ勧誘目的という会員が見つかり、あるいは立ち上げメンバーの幹事の一人が他のメンバーに内緒でこのサークルにコンサルタントを招き入れる。サークル立ち上げメンバーたちは、このサークルを維持したいと考えているが。

組織は始まった頃から崩壊に向かっている、と云ったのは鴻上尚史だったかしらん。会社が創業者を失って、あるいは劇団が創作と生活の狭間で、というのと同じように余暇のためのこういうサークルでも、仲間だからこそ見ないふりをしていたこと、気がついていても気がつかないことをしてきたことが、こんなにずれてしまうこと。

こういう題材、劇団だったり、国の物語として語ってしまうと、そこで凡庸な見かけになってしまいがちです。あるいは会社を題材にとっても、なかなか地に足の着いた、腑に落ちるように描ける作家はそうはいない気がします。いわゆるアートしての目新しさで目立つ劇団は数あれど、わたしたちの物語として、気持ちにも理性にも無理なく描ける確かな力はもっともっと注目を集めていいと思うのです。

芝居を観始めた頃、もっと規模は小さいけれど社会人サークルでパラグライダーやらバーベキューやら行ってたころがアタシにもあったなぁなんて切ない感じ。なるほど幹事クラスの人々は出会い、結婚してたなぁ、なんてことを思い出して、物語とは別のところでも切なさを感じてしまうのは、ともかく。

マルチとこの手のサークルに本質的な違いがあるのか、という中盤で提起される問題は興味深い。マルチは鍋や化粧品や洗剤を売り、サークルはコミュニケーションを売るのだ、という類型化の流れが鮮やかで、自然な物語としても、あるいは頭をめいっぱい回転させていろいろに考えながら観ていくのもどちらも楽しそうなのです。

物語の本質とは違うかもしれないけれど、blogやtwitterや評価サイトといったたぐいの、客という立場に安住して言いたい放題な、ネットというモンスターも、社会に開いた集団を描く外的要素として巧く取り込むのには舌を巻きます。これも劇団ネタっぽいけれど、そうしないでもちゃんと成立。あるいは、アタシもいつそうなってしまうかわからない怖さ。

本作は基本的には男目線の物語。今回に限って云えば女性の描き方はその点において象徴的なキャラクタ四つに集約されていて、人間としての厚みには欠ける気がしますが、贅沢な女優陣がきっちり。出会いを求め続けている惚れっぽい幹部を演じたザンヨウコのチャーミングさと、あるいは終盤でのつっこみ。ふわふわしてそうで実はというボランティアを演じた津留崎夏子は終盤、平日夕暮れの事務所のシーンが印象的。マルチ勧誘の女を演じた片桐はづきは、追いつめられ具合の逆ギレがツボ。リュックを背負い早朝読書会を企画で少々うざったすらある会員を演じた原田優理子は、まれにみる「ブス」キャラがレアで楽しい。なるほど眼ぢからってのは一歩間違えるとうざったいのだな、とか、化粧で変わると女性を云うけれど、美人でもそうでなくできるのだなぁと思ったり。

小野哲史、霧隠才蔵の立ち上げ幹部二人、ずれを認識しても時にずらし、時にぶつかり、時に無視するという間合いやたたずまいの迫力。若手幹部を演じた須貝英は、フォロアーっぷりが印象的。コンサルタントを演じた井上裕朗は少々ヤクザっぽいのが、逆にそれらしい。

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