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2009.12.05

速報→「午后は、すっかり雪」青☆組

2009.12.4 19;30

青年団リンク・青☆組の新作。生誕80周年となる向田邦子(wikipedia)をモチーフにしながらも、再構築。女性を描く若い女性作家の確かな力95分。13日までアトリエ春風舎。初日二日目に設定されていたトークショーを狙ったわけではないのですが、気がつけばこういうことに。

毛布にくるまって寝ている男。久しぶりに来る女は売れはじめてホテルに缶詰になって書いている作家は男の家に仕事を抜け出してはスープの仕込みとひとときの休息を得にやってくる。あるいは作家の子供の頃の家族の風景、妹の嫁いだ先、嫁がなかったもうひとりの妹のこと。

向田邦子の生きた昭和という時代とはいえ、実際のその生涯というわけではなく、昭和38-39年のオリンピック直前と昭和63-64年の昭和という時代の終わりという二つを軸にするように構築。彼女の人生を物語として描くと云うよりは、それをモチーフにしながら時代を、しかも女性の置かれた立場を強く意識して点描した印象。粗暴で感情の表現が巧く出来ない男とそれに尽くし耐える女たちの世代を30年代(「父の詫び状」が象徴的)に求め、現在に繋がるような優しい男と自由を(あの頃よりは)獲得し女たちの時代を昭和の終わりに描きます。

多くの参考文献をあげ、名前を引用しながらも、時代も時系列も人物もおそらくはかなりの部分を創作したかたち。歴史の中にフィクションを潜り込ませるということではパラドックス定数が思い浮かびますが、それよりはもっとエモーショナルに振った感じ。こういう物語空間が心地いいあたしには至福ともいえる時間なのです。

缶詰になりながらばりばりと放送作家の仕事をこなしてまさに上り調子の女と、優しいけれど仕事に就くことが出来ず多少の引け目を感じている男。この二人の静かな空間が実にやさしい。「目標を俺に合わせないでほしい」という会話をやりとりする二人に泣かされます。

あるいはシンボリックな「昭和の男」二景を描く30年代。一家の長たる父親の前に三姉妹と母親。威張り怒鳴り散らし時折愛情。あまりにステロタイプな描き方は客席に笑いを起こすけれど、あたしはむしろ泣いてしまう。これはアタシには原風景でも何でもないのだけど、そこに子供を育てるということと、間違いなく団欒(父親が寝てからの四人が秀逸)あったある種の当たり前をアタシ自身が手に入れられてないってことの屈折した気持ち故、という気がしないでもないのだけど。もう一つのばりばりと働く車のセールスマン夫の妻の風景は、もっと経験のない風景だけれど、酔って帰ってくるシーン(放送台本の体裁を取っている)がちょっといい。

セットはむしろ無機質な張り出しの島で、ちゃぶ台、毛布といった小物(でもないか)をシンボリックに置きながら世界を立ち上げます。

邦子登場のシーン、帽子姿で毛布に近づき座る姿を観るだけで、もう向田邦子にしかみえなくなってしまっている福寿奈央が実にいい。ある種の天真爛漫さがあることがこの人を作り出している印象を見事に体現していて声も実によくて。唯一一人の人物の二つの時代を演じる天明留理子も印象的。羽場睦子のコミカルさ、時代を耐えた妻の姿も印象に残ります。

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