【芝居】「廻罠(わたみ)」乞局
2006.10.04 19:30
喪服割引など気持ち悪い世界を描くのを得意とする乞局(こつぼね)の新作。王子小劇場が仕掛ける 演劇祭の 最初の一本でもあります。110分弱。9日(祝)まで王子小劇場。
都内の地下、立ち入り禁止の深度のある下水道。望んでではなく、浮浪者になるざるを得なかった人々。見回る公務員が一般の市民を「棄て」、地上に出られない彼らは、出口を探し、さ迷い歩く日々。
ある日、若い女が同じように棄てられて…
蛍光灯の僅かな明かりがほとんどの舞台。雰囲気はありますが、舞台としては少々暗いのです。特にキャットウォーク(劇場のではなく、舞台に設えて)の高い場所での日常の低い体温の芝居から始まることもあり、物語がどちらの方向に歩みだすのか、観客と作家の探りあいの場である序盤は、わかりやすくはありません。
「この世界」のこと、がわかり始める中盤でも低い体温の会話が続きますが、緊急事態が起こっている場面はテンションが興味をひきます。もっとも、何処で閉まっているのかが、音響も照明もわかりにくく、役者の力だけに頼るのが勿体無い気もします。
最初からして日常とは明らかに違う場面を設定した時点で、アタシの見慣れた乞局とは描く世界が変わっている気がします。今作の世界ならば誰もがオカシクなるのが当たり前ですから、日常に見える世界から一足飛びに全く別の世界に突き落とされるような、乞局の印象とは少々異なります。この落差のなさは食い足りない感じをうけるかもしれません。
一方で、一生懸命だったり、キリキリと消耗する人々だったり、ストレスのはけ口など、気持ち悪いというより、嫌な世界を粘着質に執拗に書くこの作家の持ち味は、今作においても生きていると思うのです。単に気持ち悪さということだけではない、作家の次のステップの始まり、なのかもしれません。
わかりにくいところもままあります。たとえば終盤近く、若い女二人が衰弱しきって登場するシーン。若い女がこういう体裁で出てくれば、妊娠と考えるのが普通で、三ヶ月ほどの時間が経過してしまったようにも見えます。女性だけこうなってる、というのもそう感じさせます。単に栄養失調だったという解釈もありますし。妊娠か否かはともかく、時間の流れの解釈が割れてしまうということで、 観客が混乱するような気もします。もっとも、この混乱も想定範囲とした企みという気がしないでもないのは、この芝居見ると、ついつい人間を信じられなくなってしまうから、ということかもしれませんが。
初日は超満員。静かな芝居だからこそ、冷房が効いててほしいなあ、と思うアタシです(これは人によって変わりますね)また、かなり激しいシーン、しかも足場の悪いシーンも多く、楽日まで怪我のないようにと願ってやみません。
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