2017.07.21

【芝居】「シンクロ・ゴッサム・シティ」シンクロ少女

2017.7.7 19:00 [CoRich]

19日まで、シアター711。110分。

町は荒れていて、犯罪が横行している。 離婚して町に戻ってきた次女を迎えにきた長女・三女が運転する車は男をひいてしまうが、男は大丈夫といって病院にも警察にも行かない。 男は貧しいながら、ダンサーのほか多くの仕事を掛け持ちして弟を養っている。町は荒れているが正しいことを貫くように言い続けている。
弟は公園で傘を持った少年に出会う。互いに友達がいないが、テーマパークのアトラクションの好みが意気投合し、友達となるが、母親のことが苦手だったり友達のためといいながら子供からジュースを奪ったりが気になる。 兄は三姉妹の次女と恋に落ちて、花火を見に行くまでになる。兄弟は毎年行っていた花火なのに弟は連れて行かれなかったことに裏切られたと感じる。
事故の影響で兄は右足が動かなくなり働けなくなるが、三姉妹は知らぬふり、弟のことは育てなければならない。

バットマンの舞台、ゴッサム・シティ(といいつつ未見なのだけど)を思わせるモラルが崩壊した街。車で人をひいてもそのまま逃げようとするし、万引き、当たり屋が横行。そんな中で正しいことを貫くように生きる兄弟、あるいはそんな中でもはぐくまれる友情であったり恋心。ギリギリのところで「正しく生きていた」兄、事故の後遺症で体が不自由になり稼げなくなる中、「正しく生きること」と「弟を育てること」の狭間で苦悩し後者を選び取るためにいわば「バッドサイドへ踏み込む」こと。

別々の無関係に思われるシーンの点描の中で、一人の人間を若い頃と現在で別の役者に演じさせるのは前作でも使われた手法で、二回続けて使うのは巧くない気もするけれど、確かにグッドサイドの時代とバッドサイドの時代を対比して、その落差を描く手法としてはなかなかぴったりだなぁとも思うのです。

バッドマン未見のあたしですが、街のあちこちに神出鬼没なゴーグルをかけた女であったり、傘を持ち続けている男であったり、あるいは金持ちになっている孤独な男など、アメコミを思わせるキャラクタをまとった登場人物が目白押し。音楽も楽しい。世知辛い昨今だから、まあ書きづらいけれど。

バットマンの世界から出てきたような二人のキャラクタを演じた中田麦平、宮本奈津美は強烈な印象だし、ずっとこの世界に居る住人という説得力。三姉妹も印象的で、長女を演じたしまおみほは真面目一辺倒(だけれど、人を轢いてもそのまま逃げようとする)、次女を演じた堂本佳世は離婚して戻ってきたのに早々に次に、という男が切れない感じの説得力。三女を演じた西田麻耶、とりわけ、弟に口説かれ喜んだり可愛がったりするシーンがとてもよいのです。

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2017.07.19

【芝居】「スロウハイツの神様」キャラメルボックス

2017.7.7 19:00 [CoRich]

辻村深月による小説をキャラメルボックスが舞台化。 16日までサンシャイン劇場。60分。

十代を越えると抜けると揶揄される作家の男。作品に影響を受けた子供が起こした事件のバッシングでしばらく仕事ができなかったが、作品に救われたという新聞への投稿に救われ、数年後復活を果たした。その男は、漫画家やイラストレーター、映画監督などクリエイターたちと暮らしている。新進気鋭の脚本家の女が偶然借り受けた大きな家をシェアしているのだ。
作家の連載は好調だが、よく似た物語も発表されていて、その作家の原稿がこのシェアハウスに送られてきたことでこの中に盗作した作家がいるのではないかとみんなが疑いを抱く。 脚本家は、かつて作家の作品に救われていて、なんとしても作家を救いたいと思う。

謎解きミステリーの体裁を持ちながら、バッシングや盗作、あるいは過労といったクリエイターにまつわる困難の数々。それを助けたいと思う気持ち。それを支えるものとして、少なくとも表立っては恋愛の感情としてではなく、あくまで感謝と作品や作家への敬意ゆえに見返りを求めずに相手を支えたいという気持ちとして描かれます。

いくつもの困難を乗り越えてきた長い時間、作家と脚本家という二人の人物の異なる視点でなぞります。作家のバッシングを救った一通の投書、その主の困難な日々を陰で支え続けた人物の存在、そして今また盗作という困難から作家を守ろうとすること。互いに好意を寄せていても、仕事の相手として対等であり続け、表向きはそれ以上に進まないふたりは、自分がした施しを他の人が知っていること以上には相手に伝えません。 それは好意の施しが、この少しの緊張感と誠意をもった対等の関係でいることを、もしかしたら壊してしまうという恐れを本能的に感じ取っているのかもしれません。終幕は、新たに二人が仕事のパートナーとして一つの仕事に向き合うことになることの予兆で、二人の関係が新たな段階に進んだことなのだけれど、まるで二人の愛情が成就したかのようにすら感じるあたしです。

ミステリー的な仕立てとしては、作家と脚本家それぞれの困難の時代をそれぞれの立場から描いた過去の回想が中心になっています。 脚本家の視点では、親の犯罪による離別など苦しい時代を作家の作品に支えてもらった強い気持ち。図書館に蔵書が増えたり、妹と週に一回会っていた駅の待合室に突然テレビが設置されて同じ作家のアニメ作品が見られるようになったり、一度は食べてみたいとあこがれていた東京のスイーツを口にすることができたりという幸運。それが支えとなって脚本家の仕事を手に入れ果たしてその作家との直接会うことができ、シェアハウスへ誘う。 作家の視点では、支えてもらった一つの投書から執念で捜し当てた彼女の不遇を知り陰から支え続けていることとして同じ場面をもう一度なぞります。じっさいのところ、互いがそういう裏表になっているだろうことはわりと早い段階(サンタクロースでわかっちゃうじゃん、はご愛敬。)でわかってしまいますから、謎解きというよりはわかったうえでなぞってディテールが肉付けされていく楽しさという感じか。終盤のこの謎解きは、あくまで回想シーンで時間が飛んだりはしてないのだけれど、不思議とクロノスの物語を思い出すあたしです。それは「会いたい人に会うために懸命」な人のすがたがそれを連想的に想起させるということなのかもしれません。

脚本家を演じた原田樹里が実にいい。元気いっぱいというよりは、きちんと仕事に向き合い続け愛情をひた隠しにする大人の女性を繊細に。 作家を演じた大内厚雄は挫折から復活した力強さを内包しつつ、とぼけた雰囲気の造形が実に軽やかでよいのです。シェアハウスの住人の一人を演じた玉置玲央、なかなか売れない瞬発力のバネ、人々を気遣う気持ちの深さ。編集者を演じた森山栄治のちょっと怪しい山師な雰囲気がいい。ヒール役を背負う木村玲衣はなかなかな小悪魔感、コミカルを背負う岡田さつきのいろんな表情が楽しい。

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2017.07.17

【芝居】「Y FUTAMATA」ロ字ック

2017.7.7 16:30 [CoRich]

ライブハウスでドリンク付きの公演。当日キャンセルだけど潜り込み。あ、ドリンク引き替え忘れた。7日まで近松。75分。

ストーカーしていた男のところにナイフを持ち押し入る女。ある女優の芝居を見に行ったが、遅刻した上に途中退出してしまった後に舞台に火が放たれ観客はみんな死んだのに自分だけ生き残り、その上その夜女優と話したという「丸山事件」(作・演出 青木秀樹)
飲み会の後作家の家に流れ、終電がなくなったあとに一人残った女優。 女優は作家の才能に惚れているとはいうが、作家の下心のある誘いはきっぱり断る。「演劇の夜」(作・演出 田川啓介)
芸人コンビ、一人は女と暮らし、ひとりはそういうことはない。合コンにはいってみるものの。20年後の自分たちは「僕らは小沢健二に踊らされて、ここまで」(作・演出 山田佳奈)

「丸山事件」は、1980年の新宿バス放火事件の放火と心身耗弱という状態をモチーフに、なるほど通り魔的な放火犯、その生き残った当事者。芝居を見に行った観客と名乗る女だけれど、じつはその芝居の出演者で、彼女自身が舞台に火を放ったというメタ的な構造になっていて、その芝居を観ているワタシという観客もまたそのメタに取り込まれているのが見事。病的なほどの繰り返しや、記号的ですらある「狂っている」という芝居は正直ちょっと時代を感じないことはないけれど、明確に青木節だし、ふつうにやればアウトと指摘されかねないことばかりのわりにそういう気にならない、というのは不思議な感覚です。迫力ばかりではなく、狂ったままのテンションで走りきるという体力を使い切る芝居を、一人で背負いきった小野寺ずるが見事

「演劇の〜」は才能に惚れることと恋愛の感情が交差し勘違いする物語。女優二人きりで過ごしている夜中のとろんとした雰囲気もまた、才能への愛情だけれど、それを自分自身への恋愛感情として勘違いする脚本家のすれ違い。演劇の現場に限らず、ところどころでありそうな勘違いのコミカル。そんな気はなかったと釈明するも、前のめりになった脚本家はパワハラまがいに権力をちらつかせたり、反対に女優は寝たいからキャスティングしたのか、と矜持に訴えてみたり。この先も同じ業界で仕事が続くかもしれないし、互いのフィールドではそれぞれ認められているというパワーバランスだから成立する、恋のすれ違いのコメディの仕上がりになって楽しい。このバランスがなければ単にパワハラセクハラ案件なわけだけど、それを絶妙のバランスで乗り切るのはさすがにイマドキの作家だと思わせます。

「僕らは〜」はラップ調に始まる序盤を経て、まだ売れない芸人コンビのあれこれと、その周りの人々。新人で構成されているとはいえ、役者以前に、正直にいえば物語そのもの力量が前二本に比べて歴然と分が悪く、これが最後に来るのも構成としてもったいない気がします。もっとも、「ライブハウス×演劇」というスタイルに対して、音楽推しの芝居を目指していると感じられるのはこの一本だけで、そういう意味では劇団主宰としての矜持ともいえるのです。

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【芝居】「小さな短編演劇祭 in 下北沢」世の中と演劇するオフィスプロジェクトM

2017.7.7 14:00 [CoRich]

女性の作家による短編三本、75分。9日まで下北沢スターダスト。戯曲販売のほか、演出家の手による朝採れ野菜の即売も楽しい。

販売店のバックヤードらしい休憩室、学生バイトの店員が隣のクラスの男に声をかけて連れてきた。万引きをしたらしいが、そんなに親しい訳でもないが互いには何となく知っている。「きみにときめく」(作・長谷川彩)
屋上で下を見つめる男、警備員が入ってきて飛び降りようとするのをみかけて制止する。止めたのはここから飛び降りた男だが、飛び降り、何かを後悔していることだけしか覚えていない。押し問答の末もう一度飛び降りようとする警備員を屋上に現れた女が止める「屋上のおとこ」(作・美崎理恵)
太っているとふさぎ込んでいる女の元に現れたのはしばらく会えなくなる親戚の女。税金で暮らし自分のしたいことを言わないように育てられた女は、人々の考えることをくみ取ることを強いられてきた。ふつうの人が経験することを経験できなかった。それも自分が天皇にあると思っていたからだが「水の器」(作・河田唱子)

「きみにときめく」は 勉強ができて裕福な同級生の嘘を見抜くアルバイトの男。嘘で人の人生を台無しにするような人物にわくわくする、という性癖を持つ男、ある種キツネとタヌキの化かし合いというか、ヘンタイとキチガイのBLもののようですらあります。そういう特殊な性癖に惹かれてしまうどうしうようもない人という体裁。その性癖をを補強しようとして、兄にレイプされたという女が結婚まで追い込む話を同じ臭いがすると挟むけれど、物語のほかの部分に匹敵するぐらいに長く、だれる印象があってもったいない。特殊な性癖で惹かれあうふたり、みたいな感じで押し切るのは珍しくてちょっとおもしろい。

「屋上の男」は屋上に集う三人というフォーマットだと名作もあるけれど、もちろんそれとは関係ない物語。きっかけとなるのは、死にたいと思い詰め屋上にやってきた警備員だけれど、物語の中心はかつてここで自殺した清掃員、それを思い出した恋人。自殺した男の亡霊が死の淵の警備員には見えるのに、恋人からは見えないというのが構成の工夫で、その間をつなぐように警備員が終盤近く孤軍奮闘するのがちょっとおもしろく。その先で感じるのは、無いはずのペンキの臭い、女が再び警備員を制したことばが男に届き、亡霊となっていた男が姿を消す、というコンパクトな一シーンを丁寧に描いています。女を演じたこいけが現れてからが俄然物語りが回るように感じられ印象的。

「水の器」は女性の皇族をめぐり、女系天皇の議論を俎上にあげた物語。いわゆる皇族だったり政治のあれこれを茶化したようなところもままあるように描いてはいるけれど、実際のところ作家の問題意識の中心は(皇族で承継者の問題として)「女に生まれてごめんなさい」という台詞が象徴的に現している「この国で女性であることがつらい」ことのように思います。
それを女性の某大臣自身が「結婚すれば男系の仕組みの中で生きていける」とか「男系の維持こそがもっとも大切」とまで、少々道化のように言い切らせます。見た目こそゴーストバスターズのようなバックパックに黒眼鏡にタイツというクオリティと熱量の高いパロディだけれど、作家の冷静な視点はあくまで、この国で力を持つ一定の人々のある種の本音ともとれる視点からぶれることはないのです。
とはいえ、そのパロディっぽさや、大麻をめぐる首相夫人まわりのネタ、皇族の実名、はては女系の天皇を覚悟していたのに男子が生まれてみたいな話題をずばずばと放り込むのも、最近なかなか無い政治風刺の笑いという体裁でもあって楽しい。某大臣を思わせる女を演じた小杉美香の思い切ったクオリティの高さと突き抜けるテンションはちょっと凄い。

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【芝居】「たちばなきょうだい、と天使たち」FunIQ

2017.7.1 17:00 [CoRich]

俳優二人によるユニット。さまざまな作家の作品を上演する企画の第一段は競泳水着の上野友之の作演によるもの。2日までIto・M・Studio。95分。

イタリアンバルを始めたがうまくいかずガールズバーになった店。最初の店長は辞め、新婚の時から仕事を辞め一緒に店を立ち上げた男が店長になっている。元キャバ嬢、イラストレーター、フリーター、売れない女優などの店の雰囲気は和やかだが売り上げは悪く、たち行かなくなりつつあるいっぽう、妻とは冷え込み、店の女と恋仲になっている
店長の実家には十年引きこもっている兄が居るが、母親の入院を機に、部屋を出て、妹に連れられ店にやってきて、店で働くことになる。兄の貯金と、働きで店の経営は上向くようになったある日、元の店長がもう一度店を出すと誘いにくる。

男を主役にするのは珍しい印象の作家。懸命に生きてボチボチではあるが、やりたいことも諦めつつある日々。ずっとお荷物だと思っていた引きこもりの兄と暮らし始めることで見える転機、それなのに時を同じして昔の目標だった店のことの再度の挑戦のチャンス、妻とのどうにもならない関係、不倫の女。ずっと沈みっぱなしだった日々に突然現れるいくつもの選択肢、どれを選び取るかの分岐点。

仕事の誘いは断り、妻と別れるいっぽう、兄とのこの店を続け、恋人との関係を続ける選択をする男だけれど、恋人もまた人生の選択肢で新たな道を歩むことを決め、分かれることになるほろ苦さ。店こそ続きそうだけれど、女たちが店をやめつつあって、妹が働こうかという話しもある終幕。未来を感じさせるととることもできるけれど、商品である女性たちが入れ替わるわけで店がどうなっていくか、不穏も感じるアタシです。

引きこもりの兄は、見た目こそちょっと挙動不審だけれど、物語の要請とはいえ、わりと何でもこなすなど少々スーパーマンに過ぎるのではないかという気がしないでもありません。いっぽう、ガールズバーとなった現在を中心にしつつ、過去の場面をいくつか回想で登場させますが、明確な場面転換をしないでも、少し前に語られた「浴衣デー」の話から女性たちが浴衣で登場するだけで元の時間に戻る、など場面の転換は実にスマートでかっこいい。

店長であり弟を演じた辻貴大は苦悩しつづける役どころで少々重い語り口。引きこもりだった兄を演じた日比野線はそういう意味ではダサっぽいけれど軽やか。末っ子の妹を演じた綾乃彩は兄二人をみつめる冷静な視点。ガールズバーで働く女優志望を演じた鮎川桃果は、そのどちらもやれそうな美貌の説得力。元店長を演じた市原文太郎は、よくいえば再挑戦のバイタリティ、悪くいえばあまり反省してない感じの前向きさ、とはいえバイタリティ大事。

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2017.07.11

【芝居】「夏休みの思い出 ケープカナベラル編」あひるなんちゃら関村個人企画

2017.7.1 17:00 [CoRich]

あひるなんちゃらの関村俊介による個人企画、二人芝居の短編を、間隔を詰めながらごく小さな空間で公演を重ねていくようです。45分。2日までlive space anima。

兄妹の会話。子供のころ、親戚のおじさんが宇宙飛行士として打ち上げを見に連れて行かれた筈なのだが、兄は覚えていると言い張るものの妹の質問には答えられないことばかり。

5月公演のおじさんたちとゆるやかにつながる「宇宙から見た地球の話」今見たものは、変わってしまうはずだとか、ちょっとポエジー。ゆるやかにつながる二人芝居というと、かつての二人芝居連作シリーズ・メトロポリスプロジェクトを思い出すアタシです。 物語の方は、思い出せないこと、思い出したことの記憶の差をベースに進む兄妹のたわいない会話。ゲームの下ボタンを押して狭いところをくぐる話とか、現地のおいしいハンバーガー(five guysって実在するのね)に行くはずが、マクドナルドに行き続けたという妙にリアルで細かい小ネタを重ねていきます。

大人になった今なら、思い出のあの場所をもうもう一度自力で訪ねることができるし、その場所は変わっているかも知れないということ、あるいは実家を出る妹が来年はもう一緒に旅行などできないかもしれない(だから今から旅行に行こう)ということは、兄妹のここまで一緒に育って大人になったこと、そしてここからは別々に生きていくということ。ちょっとほっこりとするし、ちょっと寂しさすら感じるのはワタシも人の兄貴だからなのかもしれません。

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2017.07.10

【芝居】「泥の中」VAICE(ヴァイスあかぼし)

2017.7.1 14:00 [CoRich]

95分。2日まで駅前劇場。

オジサン俳優ばかり、旗揚げの2016.3から同じ作演、女優の一人の客演も共通。

場末、食中毒を出して酒と乾き物ぐらいしか出さない酒場に集う男たち。 祭りのある今日だが昼間からほかにいく場所もなく店にただたむろし酒を飲んでいる。東京からの客も居たりするが今一つなじめない。
店主が長い間追い続けたのに避けられ続けてきた女が自分からこの店に転がり込んでから数ヶ月。二人は婚約している。女は店にも顔はだすものの、この店を畳んでほかに引っ越し二人で暮らそうとたくらんでいる。店主の妹と女は折り合いが悪い。
店を訪れた見慣れない男は手があたたかく、この店がなくなると聞き困り果てる客たちをあっという間に取り込んでしまう。店主の婚約者がすべての元凶だと客たちを煽る。

人生をかけ追い続けたのに袖にされ続け、そろそろあきらめてこの小さな酒場でシケた人生が暮れていくと覚悟したところに、唐突に舞い戻ってきた女。序盤で女がいう「ワタシは女優」、つまり生きるためにこの男に取り入り、演じ続けようという決心。こんなところまで追いかけてくる男が更に現れるぐらいにモテ続けてきた女もまた年齢を重ね、それまでは見向きもしなかった男を選ぶのもまた、重ねた人生の着地点を考えての妥協。

年齢を重ねて終い方が見えはじめた男女が選ぶこれからのことはちょっとほろ苦い。程度の差こそあれ、幸せに生きることにみな貪欲。一見ヒールで居続けるイヤな人物である女もまた、貧乏ゆえの僻み根性が原動力になっているのだという一言がうまく効いていて説得力をぐっと増すのです。

正直にいえば、追ってきた男が唐突に「手の温かさ」だけで酒場の人々をあっという間に取り込んでしまうところに違和感があるアタシです。物語が大きく動く不穏さという意味で重要な点なのに、ここの説得力が薄くてノレないのが惜しい。ここに目をつむれば、彼が女を煽り立てる理由には納得感があるのだけれど。

店主を演じた林和義のちょっとした薄笑いで見てる表情がちょっといい。後半のSMで吊されているのもコミカルで楽しく。婚約者を演じた小林さやかは年齢を重ねてもモテて勝ち続けてきたのだろうなという説得力と、その底にあるどす黒い貪欲さもまた新たな魅力。店の客を演じた有川マコト・省吾はそれぞれ、人のいい、でもちょっとスネて冴えないオジサンたちが魅力的。

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2017.07.05

【芝居】「さよならだけが人生か」青年団

2017.6.25 14:00 [CoRich]

青年団の再演作、ワタシは初見です。7月2日まで吉祥寺シアター。

高級住宅地造成の工事現場、何かが見つかったらしく工事は止まり、発掘のための教授や大学生や役人が訪れるようになっている。
雨が降って工事も発掘も進まない日、プレハブ小屋には職人、大学生などが控えている。外出してしまった職人を訪ねてきたのは、その娘の婚約者。大学生の一人は同じ現場にいる恋人に留学を切り出せずに居る。本社からの社員や役人もやってくる。

当日パンフによれば、「伝えたいことなど何もない」物語。現在の形の青年団の作品としてはわりと初期から演じられているもののようで、当パンにあるシードホール、もアタシは行かないままに無くなってしまいました。 2000年の再演では石器の捏造などの世間で起きたことから逃げるように改訂を加えているようですが、全体としては生きて働いて生活して、恋して結婚して、あるいは気を遣ったりへつらったり、ふざけたりという暮らしている人々を点描するよう。

工事の職人たちと大学生、親会社の社員や役人など、雨と発掘で動きを封じられ集うプレハブ小屋へ出入りする人々。逃げ回る婚約者の父親に職場にまでやってくる男とか、留学を控えて恋人と離れることになる大学生の恋人たちなど恋心を物語のスパイスにしながら、それでも暮らし働き生活する人々を描くのです。

とりわけ、終幕近く、もう今日は仕事がないからと缶ビールがあき始め、歌い騒ぎ始める人々、働き酒を飲みな労働者諸君が、なぜか今のワタシには心強い。もっとも日本人ばかりで携帯電話もないのですれ違うこの環境は少々古き良き昭和の香りにすぎて現在進行形の姿ではありません。が、思いの外違和感がないのは、人々の営みが時間を経ても意外に変わらずそこにある、ということかと思うのです。

父親を演じた山内健司が、飄々として言葉少ななオヤジっぽさの説得力。親会社社員を演じた太田宏の現場に気を遣うサラリーマンっぽさ、おなじ社員の小瀧万梨子の現場に会わせたノリの良さが楽しい。 序盤、職人とアルバイトで延々と話すシーンもよくて佐藤滋の空回りっぽさ、大村わたるのアルバイト特有の理不尽を受け入れる感じもずっと観ていたいぐらいに楽しい。婚約者を演じた伊藤毅、緊張した面もちゆえのコミカルが軽く、楽しい。

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2017.07.04

【芝居】「ブリッジ」サンプル

2017.6.25 14:00 [CoRich]

10年目にして劇団休止公演。ワタシは初期 (1, 2) しかみてないので、実は10年ぶりに。 25日まで神奈川芸術劇場・大スタジオ。135分。

一人の男の腸内をシェアし、未来の人間は身体の表と裏がうらがえることを望む「モツ宇宙(コスモ)」なる教義のコスモオルガン教会。過去のそれぞれの教会との出会いやキャラバンの日々を描いたあと、観客とのトークショーが始まったところで、一人の男が現れる。

一人の静かな狂気の男を中心に集う人々の流れ、あるいは迫害の日々を描く宗教劇を上演するセミナー形式の体裁。舞台下手にはマイクのある演台、大きなカーテンのような幕。 うさんくさい笑顔で現れる人々、ゆっくりとした口調で温和に話しかける人々。 客席に座る私たちはそのセミナーの参加者のよう。もちろん芝居ということはわかっていても、この手のセミナーへの拒否反応を抱えるワタシにはどうにも居心地がわるく。更に腸内細菌の共有から、セックスすら共有するごく小さなコミュニティ、芝居としては面白がれる程度には大人にはなったけど、やっぱりむずむずとするアタシです。

乱入する男によって明かされるのは事件を起こしたがために迫害を受けるようになったということ。刑期を終え出所してきた男が戻る場所はここしかないのに、それを拒否したいと思う人々。やがて、「全てをシェアしていく」と表面的には繕っていてもその内側にあるさまなざま気持ちが見えてくるのです。 「人間は管のようなものだから、内側から裏返るように、内に秘めていたものを面に表出し、何でも共有していく」というロジックがちょっとコミカルで面白い。結婚すら基本的には認めない彼らなのだけれど、そこの中で何かを独占したいと思う気持ち。

このコミュニティ、やはり教祖たる一人の男の存在によってギリギリのところで分解を免れているのだけれど、終盤、刺され倒れることで、彼らがどうなっていくのか、という終幕は劇団というかたちを終わらせる彼らの姿にもしかしたら重なるのかも知れません。

乱入する男を演じた山田百次はなかなか出てこないなかで登場、一気にこの場の空気を不穏し、しかしその臆病な人物を描く振り幅。まとめている女を演じた伊東沙保は美しさゆえの広告塔、それゆえの胡散臭さも同時に醸し出す説得力。何より凄いのは、終始フラットに狂気のこの教団を率い続けた男を演じた古舘寛治で、こういう怪しい役をやらせるともちろん最強なのだけれど、この長丁場で狂い続けるというある種のスタミナの凄さにもびっくりするのです

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2017.07.01

【芝居】「オセロの醍醐味」れんげでごはん

2017.6.17 18:00 [CoRich]

長野県・松本市の劇団の公演。 18日までピカデリーホール。95分。

オセロの同好会。リーダー格の男の段位昇格を定例の場で祝おうとメンバーを誘う関西弁の男。が、それほど人は集まらない。会話がままならない男、ヤバい仕事をしている女、新婚で冷静な男。想いばかり空回りするなか、その祝われる男が現れる。
その男が居ない間に鳴った携帯電話の向こうでは、監禁されているから助けてほしいという女の声がする。

序盤、関西弁の男は思い切り空回りし、コミュ障だったりヤンキーだったりのかみ合わない感じはコメディの風味。爆笑編とはいかないけれど、コミュニケーションの熱量とベクトルがずれた人々をみる楽しさ。

が、物語は中盤から監禁という不穏な要素が持ち込まれます。あれだけメンバーのことを想い続けているのだからそんなことをするはずはなく誤解だろうという登場人物たちの想いとは裏腹に、「それだけ真剣に想い続け考えた結果」がこの状況を生みだしている、という静かな狂気が徐々に姿を現します。そこには悪意が微塵もなく、オセロをやめさせないための監禁が彼女の幸せなのだと(彼らなりのロジックはあるにせよ)信じて疑わないということ。さらには、はじめその狂気に違和感を感じていた人々が自発的に同意し、徐々に同じ想いをもつ集団となってなっていくことを静かに描きます。そこからじわじわとくる迫力。

それはカルトの発生の現場をみるよう。オウムを知るアタシの年代ならともかく、客席に多く居る若い観客にはどう見えているのか、もしかしたら地元の演劇塾を通して若い人々と交わることで感じたある種の危うさに対する作家の問題意識かとも思ったりします。

正直にいえば、フラッシュモブに拘泥する関西弁の男に頼る序盤、楽しい好きなシーンだけれどもうすこしコンパクトでもよさそう。このサプライズを拒否する男の存在は後半でもカルトをきっちり拒否できる存在の柱。軽い芸風だと想っていたこの劇団、ここで描かれる問題意識が頼もしい。

勝手に役の向こう側に、役者のキャラクタを読みとって劇団の持つ現実が織り込まれていると感じてココを好きで見続けてしまってるアタシの悪い癖。 それを単に演劇の人々の話にせずに少し違う同好会という地平から始める物語の地の足に着いた感じと後半に向けての力強さに凄みすら感じるのです。

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